掲載日: 2018-03-16
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糖尿病と認知症との関係

 現在、糖尿病の合併症として認知症もその大きい1つとして挙げられています。どうしてでしょうか?糖尿病合併にて認知症のリスクが上昇することが、最近、様々な知見として報告されています。

久山町研究

 グラフは九州大学の福岡県久山町の研究データです。脳血管性でも正常群と糖尿病の間では5.1→8.7とリスクは上がっていますが、認知症の6~7割を占めるアルツハイマー型認知症ではその差はさらに大きくなり8.6→14.2とリスクが上がっています。

 『糖尿病患者は認知機能障害が起こりやすい。高齢糖尿病患者では認知機能の評価を行い、認知症の早期発見に努める』と糖尿病診療ガイドライン2016にも書かれており今や、認知症も糖尿病の合併症の一つであると考えられています。その原因についてはいろいろ説がありますが、認知症の原因となっているアミロイドβが糖尿病の人では賛成が亢進することが知られています。

久山町研究

アミロイドβ

糖尿病と認知症

 アミロイドβとは、脳にアミロイドβというタンパク質がたまることを引き金に、タウタンパク質が糸くずのように集まり、脳の神経細胞が変性したり脱落したりして、脳が萎縮することが知られており、それが原因でアルツハイマー病になると言われています。 (現在、アミロイドβだけでは、認知症の説明がつかないことも分かってきています。がしかし大きい要因であることには変わりありません)

 認知症の要因となっているアミロイドβの脳内での蓄積などは、実は40歳代から起こり始めているので、認知症のリスクを減らすためにも、予防のためにも、40歳代からの糖尿病はもちろん、動脈硬化の原因となる脂質異常症(コレステロールが高い、中性脂肪が高い)、高血圧などいわゆる生活習慣病を改善することは大切です。

低血糖も認知症発症のリスク

 さらに高齢者においても 糖尿病の人の認知症には記憶障害より、注意・集中力の障害が起きやすいという報告もあります。また高血糖を改善すると認知機能が改善するという方もいます。認知症で糖尿病のコントロールの悪い人では、認知症の治療と合わせて糖尿病の改善を行うことでより認知症が改善することもあります。(もちろんすべてでうまくいくわけではありませんが、あきらめずに試してみる価値はあります)

 しかしだからと言って、低血糖もまた認知症発症のリスクを上昇させることも分かっています。高齢者の方では、間違って薬を多く内服し低血糖になることもあり、また低血糖に気づきにくくなります。ですので、低血糖のリスクが少ない薬を選択したうえでの、血糖の改善を目指す必要があります。

そのためには、高齢者の場合は、高血糖も防ぎつつ、しかし低血糖にもならないような薬の選択が必要となります。現在、糖尿病の薬は日々進歩しており、そういう選択ができる場合もありますので、気になる方は相談してみてください。

久山町研究

港南台内科クリニック