掲載日: 2020-06-24
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糖尿病の検査

 糖尿病の状態を判断する検査には 尿糖、血糖値 HbA1c グルコアルブミン(GA)1.5AGと様々なものがあります。まずはそれを一つずつ説明していき、そのあとに特に、HbA1c・グリコアルブミン・1.5AGの違いを説明したいと思います。

尿糖

 文字通り、尿の中に糖がでてないか検査します。健常者はほとんど尿に糖が出ることはありません。糖尿病というくらいですので糖尿病の人では皆、尿糖が出ると思われるかもしれませんが、軽度の糖尿病の場合は尿のタイミングによっては尿糖が出ないこともあります。また尿糖は採血せずに測定できる手軽さがありますが、血糖値が高いのかもしくはそれほど高くはないのか、というどんぶり勘定的な判断しかできません。

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血糖値

血液

 血糖値は生活の様々なことに影響され常に上がったり下がったりと変動しています。例えば、空腹時、食後〇時間によりもちろん違いますし、食後の時間が同じであっても、その後運動したあとか? 寝ていたか? 食事の内容によっても、糖質の多いものであったか?脂質の多いものだったか? でも血糖値は変わってきます。

 ということで、血糖値の結果はその瞬間(とき)の値を示しています。そのため、当院では採血時に血糖測定をする際は、空腹か?食事をしてきたのか?、食後何時間後か?聞いております。

HbA1c

 HbA1c(読み方はヘモグロビンエーワンシー)は血液中で酸素を運ぶ「ヘモグロビン」とブドウ糖が結合した物質で、過去1,2カ月の血糖コントロールの状態がわかります。『血液中を流れる赤血球の中にあるヘモグロビンにブドウ糖がくっついたもの』をHbA1c(読み方:ヘモグロビンエーワンシー)と言います。一度ヘモグロビンとブドウ糖がくっつくと離れず、赤血球が約120日の寿命を終えるまで離れません。ですので、HbA1cは過去1~2ヶ月前の血糖値を反映します。また、当日の食事や運動など短期間の血糖値の影響を受けません。長期間の血糖コントロール状態がわかることで、糖尿病治療の貴重な情報源になります。

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グリコアルブミン(GA)検査

血液

 グリコアルブミン検査は、血液中のタンパク質の主要成分のアルブミンが、どのくらいの割合でブドウ糖と結合しているかを調べる検査です。グリコアルブミン(GA)の血中半減期は約17日であり、 GAは過去約2週間の血糖コントロールをあらわす指標です。HbA1cより短期的な血糖の変化をとらえることができます。HbA1c検査ではわからない短期間の血糖値の変化と、短時間だけ現れる 食後高血糖をとらえることができます。 グリコアルブミン(GA)とHbA1cの関係はだいたい以下の換算となります。

HbA1C=GA×0.245+1.73
基準値 GA 11~16%

 ちなみに特に透析の患者さんの糖尿病コントロールの指標として有用です。その理由は、透析患者さんでは赤血球寿命の短縮による腎性貧血や,その治療に用いられるエリスロポエチン治療により、HbA1cの値は低めに出てしまう、つまり過小評価してしまうからであり、グリコアルブミンは赤血球寿命やエリスロポエチン治療の影響を受けないことからが、正確性が高いからとされています。

 日本透析医学会においても,血液透析患者においては、HbA1cでなくグリコアルブミンを血糖コントロール指標として推奨されています。ただし、透析導入前の患者さんでは,多くがネフローゼ、高度蛋白尿となっており,その場合は、血中アルブミンの半減期が短縮するためグリコアルブミンも低値となり,やはり血糖コントロールが過小評価されます。従って、透析導入前の患者においてはグリコアルブミンといえど、注意が必要です。

1.5-AG検査

 1,5-AG(1.5-アンヒドログルシトール検査:イチ ゴ エイ ジー)は食品に含まれている物質ですが、栄養素としての役割はなく、尿糖と一緒に排泄されます。血液中の1,5-AG は、尿糖が出るほど減ってくるため、数値が低いほど血糖コントロールが悪いという検査です。※高血糖が続くと数値は低くなります。 過去数日間の血糖コントロールの指標となります。また昨今、数日間の血糖コントロールを示すという性質より、食後血糖値の変動が大きいかどうかも把握できる指標としても注目されております。

 ただし1,5-AGを多く含む食物を採ると糖尿病のコントロールとは無関係に影響を受けて高値となる場合が報告されています。特に、漢方薬の人参養栄湯や加味帰脾湯、葛根湯、小柴胡湯、大柴胡湯などには多量に含まれているため、注意が必要です。

基準値  1,5-AG  14μg/mL (マイクログラム・パー・ミリリットル)以上

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HbA1c グリコアルブミン 1.5AGの違いは?

砂糖

 一番の違いは、どのくらいの期間の血糖コントロール状態がわかるか、です。一番長い期間の血糖コントロール状態が把握できるものから順に並べると、HbA1c→グリコアルブミン→1,5-AG→(尿糖)となります。ちなみ血糖値はというと検査時点のその瞬間の値となります。 また、1,5-AG は比較的軽度の高血糖に敏感に反応し、食前の高血糖はあまり目立たず食後にのみ高血糖になっているようなケースを見つけるのにも適しています。

  一方、患者さんの通院頻度を考えると、過去1~2カ月と長期間のコントロール状態がわかる HbA1cが便利なのです。 数日間のコントロール状態しかわからない1,5-AG では、1カ月に1回しか通院しない場合、検査結果に反映されない期間が長くなりすぎます。 ただし、糖尿病の治療を開始した直後や、薬の種類や量を変更した直後、生活環境・パターンが変わった直後などには、その効果や影響がすぐにわかる1,5-AG やグリコアルブミンなどの検査も有用となります。また透析の患者さんでは、グルコアルブミンの項目で触れたようにHbA1cよりグリコアルブミンの検査のほうが推奨されています。このような事柄を考慮し、一番適した検査が行われますが、上記の理由にて一般的には血糖値と HbA1cの組み合わせが多く行われています。

港南台内科クリニック